資本金って何?~経営者が知っておきたい会計用語

会社のホームページに必ずといっていいほど書いてある「資本金」。意外と理解されていないその内容について触れたいと思います。

資本金とは

資本金は会社法の中で下記の通り定義されています。

株式会社の資本金の額は、設立又は株式の発行に際して株主となる者が、当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。

(会社法第445条第1項より)

わかりやすく言うと、「会社をスタートさせた時の自己資金」です。設立時に300万円を事業に投入したのであれば資本金300万円となります。

(厳密には、設立時の払込のうち、1/2までは資本準備金に積み立てることができますが、本稿では省略します。)

10年ほど前までは、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の資本金が必要でしたが、2006年の会社法改正により、資本金額の制限がなくなり、1円でも認められるようになりました。

では資本金は1円でも問題ないのでしょうか。そもそも、資本金は会社を取り巻く利害関係者にとってどのような意味があるのでしょうか。

  • 株主(スタートアップ企業では通常経営者になりますが)にとっては、株主全員からの投資額を意味します。
  • 銀行や仕入先にとっては、自己資金の多さ=財務の安定性や事業規模を図る指標となります。
  • 得意先や消費者その他にとっては、会社の信用力を図る指標となります。

例えば、ある会社から、「商品100万円を掛けで売ってもらいたい」と言われたとして、その会社の資本金が1万円だったらどうでしょうか。リスク感覚のある経営者なら、「100万円の販売代金を本当に回収できるのだろうか」と考えると思います。

多くの場合、取引先の決算書などを見ることはできないとすると、相手先の信用力を判断できる情報は資本金くらいしかないのです。

(資本金の額は登記事項なので、仮にホームページがない会社であっても、資本金の額は調べることができます。)

会社法改正により資本金は1円でも認められるようになりましたが、利害関係者にとっての資本金の意味を考えと、一定の金額を確保するのが良さそうです。

資本金はいくらなら良いのか?

これに対する明確な答えはありません。会社の事業内容や資金調達戦略によって異なるからです。

資本金額を決めるにあたり、以下のような事項を考慮に入れる必要があります。

  • 手元資金:資本金は当面の運転資金になりますので多いほど事業を安定してスタートすることができるのは言うまでもありません。
  • 事業内容:銀行借り入れで資金の全てを賄える訳ではありません。初期投資や運転資金が多く必要な事業であるほど資本金が必要となります。
  • 許認可:建設業や労働者派遣業、旅行業などの許認可が必要な事業では、資本金が一定金額以上ないと事業が行えません。たとえば一般建設業であれば500万円が必要です。このような許認可の基準を満たすように資本金を設定する必要があります。
  • 税金:住民税、事業税等の計算上、資本金等の額(資本金とイコールの概念ではないですが、ここでは資本金とみなして説明します)が大きいほど、赤字であっても支払わなければならない税金が増えます。消費税についても、通常設立初年度は非課税ですが、資本金が1,000万円以上の場合には初年度から課税されます。
  • 取引先との関係:取引先が大手企業や歴史のある企業である場合には、一定の資本金額がないと取引に応じてもらえない場合もあります。

許認可事業ではない限り、税務上のメリットを考えて1,000万円未満でスタートするのが合理的で、事業内容や手元資金、事業計画と相談しながら決めるのが良いでしょう。

減資する大企業の目的

資本金は大きいほど会社の規模や信用力を表すことができるのは事実ですが、昨今はコスト削減のために大企業であっても資本金を減らす(=減資する)動きが出ています。

資本金が5億円以上になると、会計監査人という機関を会社に設置し、監査法人等による会計監査を受けなければなりませんので、監査費用がかかります。

資本金等の額が1億円超になると、事業税の外形標準課税の対象となるほか、法人税の計算において軽減税率の適用が受けられないなど、税負担が大きくなります。

このような理由から、減資する動きが出ているのです。