公認会計士と税理士の違い
職業を聞かれて「公認会計士です」と答えると、「税理士と何が違うんですか?」と言われます。
一般的な「会計事務所」は税理士が経営しているので、「会計事務所の先生=会計士」というような認識で税理士を「会計士」とカテゴリーしている方もいらっしゃいます。
本日は混同されがちな公認会計士と税理士の違いについて私見を述べたいと思います。
公認会計士とは
公認会計士は会計の専門家であり、会計監査を独占業務としています。
会計監査とは、企業が作成した財務書類(≒決算書とその付属資料)が会計のルールに従って適切に作成されてているかをチェックし、「正しく作成されていますよ」という保証を与える仕事です。その結果、株主や銀行が安心してその企業に投融資できるというわけです。
財務書類が正しく作成されているということは、その背景にある会計処理が正しく行われる必要があります。会計処理が正しく行われるためには、企業の事業活動の中で発生した取引を正しく把握・解釈し、会計ルールに従って正確に処理する必要があります。
ここで、会計知識を深く身に付けていればよいかというと、そうではありません。監査対象となる企業と企業環境(企業の属している業界の勢力図や業界特有の慣行等)を理解していないと、新しく発生した取引を見過ごしてしまったり、発生した取引の実態を見誤って正しい会計処理が導けない事態に繋がります。
監査業務は監査対象企業から独立した立場で行う必要性があるため(監査会社と馴れ合っていては誤りを厳しく指導できませんよね?)、監査対象企業とは信頼関係を保ちながらも一定の距離間を保つ必要があります。
公認会計士になる人の大部分は、公認会計士試験に合格後、監査法人に就職します。監査法人とは公認会計士が集まって大企業の監査を行うための組織です。監査法人で3年程度の実務経験を積み、再度試験を受けて合格した人が公認会計士となります。
監査対象企業は上場会社がメインです。各業界をリードする大企業を相手としているため、公認会計士は、会計監査業務の経験を通して、各業界のリーダー企業の財務構造や、儲かっている理由、業務フロー、内部管理の手法、その業界の特徴等を理解していきます。
公認会計士の強み
こうした経験から導かれる公認会計士の一般的な「強み」は以下のような点になります。
- 会計全般に精通している
- 財務分析が得意であり、財務内容から企業の強み/弱みがわかる
- 予算管理や事業計画、投資採算管理、原価計算などの管理会計に強い
- 儲かっている企業の理由を知っている
- 監査してきた企業の業界理解が深い
- 内部統制に詳しい(不正やミスのない業務フロー・チェック体制のあり方を知っている)
税理士とは
税理士は税務の専門家であり、税務代理・税務書類の作成・税務相談を独占業務としています。
税務代理とは、納税者の代わりに税務申告を行うことを言います。税金の計算は、馴染みのない方にとってはとても複雑です。税理士に頼まずに自分で税金を計算し、申告納税することも可能ですが、誤って過大・過少に申告してしまうリスクがあります(過少に申告してしまった場合には、後日追徴課税されることとなり、加算税や延滞税等の罰金的な税金が加わって、結果的に本来よりも多額の税金が発生してしまうこととなります)。そのため、税務の専門家である税理士が税務代理する事業者が多くいます。
税理士になる人の多くは、税理士試験合格後、税理士事務所や税理士法人に就職し、税理士先生の補助者として2年以上の実務経験を積み、登録して税理士となります。
税理士としての業務は、独立性の求められる公認会計士の監査業務とは異なり、クライアントと近い距離で接することができます。したがって、経営者の身近な相談相手として様々な相談に対応することが可能です。
税理士の強み
こうした経験から導かれる税理士の一般的な「強み」は以下のようになります。
- 税務全般に精通している
- 節税に関する知識がある
- 税務申告に関する諸手続(各種届出、年末調整、源泉徴収、支払調書等)に関しても精通している
- 多くの中小企業を見てきている
- 中小企業の経営者特有の悩みに触れてきている
まとめ
公認会計士と税理士はいずれも会計分野の専門家であり、混同されがちではありますが、それぞれの独占業務が異なり、積んでいる経験値も異なります。
記事の中で公認会計士と税理士のそれぞれの強みを記載しましたが、あくまでも「一般的な」という視点で記載したものです。公認会計士の中にも税務知識が豊富な人もいますし、税理士の中にも管理会計に強い人はたくさんいます。
公認会計士でも税理士でも、資格を取得した後にどんな経験を積んできて、どんな強みがあるかは人それぞれということです。