中小企業が無担保で資金調達(借入)する4つの方法

銀行から借入を行う場合には不動産担保をとられるのが一般的です。

中小企業の中には(特に創業後間もない企業は)、土地や建物など担保に差し入れることのできる資産を十分に有していないケースも多く、有担保での借入は現実的ではありません。

このような中小企業が無担保で資金調達を行う方法としてどのようなものがあるのかについて紹介したいと思います。

民間銀行が担保を求める理由

無担保での資金調達方法を知る前提知識として、銀行が融資を行うにあたって担保を求める理由を確認しておきましょう。

民間銀行は、株式会社であり、営利を目的としています。すなわち、出資者である株主に対して利益を還元するために、事業上のリスクを適切にコントロールしながら利益を出していく必要があります。

そのため、社会性・公共性がイメージされる民間銀行であっても、融資を実施するにあたっては、できる限り資金回収の懸念がないように、担保や保証をとることで、返済が行われない万が一の事態に備えようとします。

法人や個人事業主が、銀行からプロパー融資(※こちらの記事を参照)を受ける場合には、よほど財務内容が優良な先を除いて、「不動産担保の差入」と「代表者による保証」を求められます。代表者による保証は、代表者が資産を有していなければ実効性が乏しいため、結局は不動産担保に依存して貸出金の保全を図っているのが実情です。

無担保による借入方法

民間銀行からのプロパー借入では無担保の融資は難しいということがわかったと思いますが、中小企業が無担保の借入を行う方法としてどのような方法が考えられるのでしょうか。

いくつかの方法が考えられるのですが、現実的な方法としては以下の4つが挙げられます。

  1. 日本政策金融公庫の融資
  2. 信用保証協会による保証付きの借入
  3. 地方自治体の制度融資
  4. 事業者ローン

それぞれについて見ていきましょう。

1.日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は政府(財務省)が所管する国有企業であり、民間銀行に対して政府系金融機関と言われています。

日本政策金融公庫は民間銀行を補完することにより国民生活を向上させることを目的としており営利を目的としていません。そのため、営利を目的とする民間銀行では融資ができないような企業にも融資することが可能です。

日本政策金融公庫の融資制度には様々な種類がありますが、代表的な無担保融資制度として以下が挙げられます。

  • 新創業融資制度…創業後2期までの事業者を対象に、3,000万円(運転資金1,500万円)を限度として、無担保・無保証の事業資金の融資を受けられる制度です。
  • 担保を不要とする融資制度…創業後2期以上経過している事業者を対象に、4,800万円を限度して、無担保の事業資金の融資を受けられる制度です(保証については、個人事業主は不要、法人は代表者が保証)

融資にあたっては審査が必要ですが、事業内容と将来性をしっかりと説明できれば、融資を受けることは十分に可能です。創業後間もない中小企業にとっては、新創業融資制度はまず最初に検討すべき資金調達方法だといえます。

2.信用保証協会による保証付借入

信用保証協会とは、中小企業が民間金融機関から借入を行う際に、保証人となって融資を受けやすくなるようサポートする公的機関であり、各県および主要都市に信用保証協会が存在しています。

利用企業の9割は「従業員数が20名以下」の小規模企業であり、利用企業は146万企業(平成26年3月末時点)と多数の中小企業が利用しています。

信用保証協会による保証付借入というのは、信用保証協会から借入を行うのではなく、あくまで民間銀行から借入を行い、当該借入に対して信用保証協会が保証を行う(返済が滞った時には事業者に代わって信用保証協会が銀行に返済を行い、事業者は信用保証協会に返済の義務を負う)という制度です。

銀行は貸出金が焦げ付くリスクを低減できるので、信用保証協会の保証付きであれば融資に応じてくれます。これを銀行が自己のリスクで融資を行う「プロパー融資」に対して「保証協会の保証付き融資」または「マル保融資」と呼ばれます。

マル保融資では、銀行の代わりに保証協会が貸倒リスクを負うため、銀行の融資審査に加えて保証協会の保証審査が必要です。ただし、銀行の融資審査はかなり軽くなりますので、銀行のプロパー融資の審査を通すよりも融資が受けられる可能性はかなり高まくなります。

保証協会による保証には限度枠があり、無担保融資の場合には8,000万円が保証限度額となります。コストとしては、銀行に対する借入金に加えて、信用保証協会に対する保証料が加わります。保証料は審査結果によって異なりますが、0.5%~2.0%が目安となります。

事業の実績が乏しい中小企業にとっては、日本政策金融公庫の融資と並んで現実的な資金調達方法であるといえます。

3.地方自治体の制度融資

民間金融機関及び信用保証協会と連携し、中小企業に対して事業資金を融資する制度であり、中小企業にとっては民間金融機関から融資を受けるよりも良い条件で融資を受けることができます。

取り扱う制度融資は各自治体によって異なりますが、中には無担保・無保証による制度融資も存在します。

地方自治体の制度融資の特徴として、手続に時間を要する点が挙げられます。民間金融機関、信用保証協会、自治体の3者に対する手続・審査が存在するためです。

自治体によって力の入れ具合が異なりますし、融資制度の条件も様々であるため、条件が合えば有効な資金調達手段となります。

4.事業者ローン

無担保による融資を受けられる手段として、事業者ローンという方法があります。銀行が提供しているものだけではなく、リース会社や信販会社、事業者ローン専門の民間会社が提供しています。

事業者ローンのメリットは手続が簡単で、融資審査が早い・通りやすい点です。一方デメリットは、金利が極めて高いことと、限度額が小さいことです。

そのため長期の運転資金調達には向きませんが、どうしても早期に資金を調達しなければならない場合には役に立ちます。

まとめ

4つの方法を紹介しましたが、成長途上にある中小企業にとって現実的な無担保融資は、日本政策金融公庫の融資か信用保証協会の保証協会付き融資です。

民間金融機関のプロパー融資に比べると融資審査が通りやすいのは前述したとおりですが、融資審査が必要な点は変わりません。自社の強み・弱みをしっかりと把握し、将来性を説得できるような事業計画を準備しておくことが肝要です。