起業したてで銀行借入は可能?
事業内容にもよりますが、起業する際には一定の事業資金が必要になります。
自己資金だけで起業する方もいるかもしれませんが、多くの方は銀行から借入を行うのではないでしょうか。
今回は、銀行借入をテーマに、銀行ごとの融資スタンスの違いと、起業時に借りやすい融資方法について紹介します。
銀行による融資スタンスの違い
2017年7月現在、日本には125の銀行があります。
これとは別に264の信用金庫、151の信用組合があり、これらを合計すると540にもなります。
※注:信用金庫と信用組合は銀行ではないですが、融資を受けられる一般的な金融機関として、本稿では「銀行」に含めて使用します。
一般的な中小企業を前提として、銀行の融資スタンスの違いを見ていきましょう。
都市銀行
三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行の5行のみ。
日本全国に支店を展開している大規模な銀行であり、メガバンクともいいます。
銀行としての規模が大きいため、融資する際の1口あたりの融資金額も大きいです。
取引先は上場会社のような大手企業が多く、中小企業の事業資金の融資としては最も審査が通りにくい銀行であるといえます。
地方銀行
主な銀行:横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、福岡銀行、常陽銀行、十六銀行など。
概ね各県に1つずつあり、各都道府県を中心に支店を展開しています。
後述する第二地方銀行とは各地域で営業している銀行という点で共通していますが、
銀行が所属する協会が異なる(地方銀行は全国地方銀行協会、第二地方銀行は第二地方銀行協会)ため一般的に両者は区分されています。
地方銀行は各地域の金融機関のリーダー的な存在であるため、地域経済を支える使命を負っています。
取引先は地域の優良企業から町の零細企業まで幅広く、都市銀行よりは借入を行いやすい銀行といえます。
第二地方銀行
主な銀行:北洋銀行、京葉銀行、関西アーバン銀行、名古屋銀行、みなと銀行など。
規模の小さい地方銀行というイメージです。
取引する融資先も地方銀行に比べて中小零細企業が多くなります。
一般的には地方銀行より借入を行いやすいことが多いです。
信用金庫・信用組合
信用金庫、信用組合ともに「銀行」ではありません。
銀行は株式会社であり、利益を稼ぐことを目的とする会社です。
信用金庫は地域の人が会員となって互いの繁栄を図ることを目的とした共同組織であり、利益よりも会員の利益を優先します。
また、営業地域も一定の地域に限定されています。
信用組合も信用金庫と同じ共同組織であり、組合員の繁栄を測ることを目的としています。
信用金庫と異なるのは預金の受入範囲であり、信用金庫は制限がないのに対して、信用組合は原則として組合員に制限されています。
信用金庫、信用組合は上記のような目的の組織であるため、中小零細企業や個人が融資先の中心となります。
第二地方銀行よりもさらに融資を受けやすいといえます。
中小企業は大手銀行から融資を受けにくい?
銀行の規模は、都市銀行>地方銀行>第二地方銀行>信用金庫・信用組合となります。
融資の受けやすい順は、この逆です。
規模が大きな銀行は、効率よく事業資金である預金を集められますし、
店舗数が多いため設備や人件費の面で効率よい事業運営が行えます。
そのため、メガバンクのように規模の大きい銀行は、大口の資金を効率よく融資したいと考えます。
実績の乏しい中小企業に対しては、小さなロットの融資しか行えないため、規模が大きな銀行ほど中小企業にとっては融資が受けにくいといえます。
起業して間もない会社・個人事業主がとって受けやすい融資とは
プロパー融資は借りにくい
銀行が借入人に対して直接リスクをとって融資することをプロパー融資といいます。
ここまでは一般的な中小企業のプロパー融資を前提として銀行の種類と融資スタンスを説明しましたが、
起業して間もない会社・個人事業主にとっては、以下の理由により、プロパー融資が特に受けにくいといえます。
- 銀行は融資する際に一般的に最低3期程度の決算書(財務実績)を見て融資を判断するが、起業して間もない企業には財務実績がないこと。
- 事業計画を融資の判断を行うが、事業計画は実現可能性の判断が難しいこと。
- 会社や代表者に担保提供できる資産がないことが多い。
つまり、「融資したお金が返ってこないリスクが高い」と銀行から見られるためです。
起業して間もない会社・個人事業主が相手とする場合、
土地や建物等の十分な担保資産を銀行に差し入れないと、プロパー融資は受けられない可能性が高いといえます。
銀行融資でも「協会保証付き融資」は受けやすい
協会保証付き融資というのは、全国47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)にある「信用保証協会」が、
銀行への返済保証をしてくれている融資をいいます(信用保証制度の説明リンク)。
事業が上手くいかず銀行に借入金を返済できない場合に、
融資の全部または大部分を、信用保証協会が銀行への返済を立て替え払いしてくれる仕組みです。
プロパー融資を受けにくい中小企業が銀行から融資を受けるために整備された制度であり、
一定規模以下の中小企業しか保証を受けることはできません。
銀行としては、借入金が返ってこないリスクを大幅に抑えられるというメリットがあります。
そのためプロパー融資に応じてくれない銀行であっても、協会保証付き融資であれば応じてくれる可能性が高まります。
融資を受けやすいというメリット以外にも、以下のメリットがあります。
- 法人代表者以外の連帯保証人は原則不要、個人事業者の場合には保証人は原則不要。
- 担保差入が不要
反対に、以下のデメリットがあります。
- 銀行の審査に加えて、保証協会の審査を受ける必要がある
- 借入金利に加えて、保証協会への信用保証料を支払う必要がある。
- (当然ですが)銀行に返済ができなくなり、保証協会が代わりに返済してくれた場合でも保証協会に返済する義務が残る。
まとめ
本日お話しした内容のポイントは下記2点です。
- 中小企業にとっては、都市銀行は借りにくく、信用金庫・信用組合は借りやすい
- 起業して間もない会社・個人事業主にとっては、プロパー融資は借りにくく、協会保証付き融資は借りやすい
本日は民間金融機関である銀行や信用金庫等を前提にお話ししましたが、
実は政府系金融機関として「日本政策金融公庫」という金融機関があり、
新たに事業を始める人や事業を開始して間もない人が無担保・無保証人で借りられる「創業融資」を実施しています。
創業融資は協会保証付き融資と並んで、起業時の資金調達として重要であるため、
改めて紹介したいと思います。