経営者が知っておきたい減価償却のキホン

本日は、会計の世界では当たり前のように使われている「減価償却」という用語について解説します。

減価償却とは

定義

減価償却とは、企業会計に関する購入費用の認識と計算の方法のひとつである。長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである。

(Wikipediaより引用)

「購入費用の認識」、「費用配分する手続き」といった会計用語が並んでおり、難しそうに思われますが、次のように考えてください。

建物や機械装置のような固定資産は、それを使用することで売上を獲得することを目的としています。

会計上の費用は支払時点ではなく、モノやサービスを消費した時点で計上します(参考記事:利益とキャッシュフローの違い)。

建物や機械装置のような固定資産は使用期間が長いため、「一時点で全額を費用計上するのではなくて、使用期間にわたって分割して費用に計上しましょう」という考え方です。

 

反対に、コピー機のインクやトナーのように、普通に使用していれば1年も持たないような資産(消耗品と呼びます)については、使用期間が短いので、使用した時点(コピー機に取り付けた時点)で全額を費用処理します。

減価償却費計算の具体例

減価償却費計算で押さえるべきポイントは2つ。「償却方法」と「耐用年数」です。

 

償却方法には、「定額法」と「定率法」があります。

定額法とは、取得金額に対して、一定年数で均等分割して費用を計上する方法です。

定率法とは、期首の帳簿金額に対して、毎年一定の割合ずつ費用を計上する方法です。

 

耐用年数は固定資産の種類や材質によって細かく決まっており、国税庁HPの耐用年数表により確認できます。

同じ自動車でも、普通自動車は6年、軽自動車は4年、貨物用トラックは5年というように分かれています。

 

「償却方法」と「耐用年数」に応じて、「償却率」というものが決まるため、それを減価償却計算に使用します。

償却方法と耐用年数に応じた償却率についても国税庁HPの償却率表で確認できます。

 

計算の具体例を見てみましょう。

<前提>

  • 決算期は3月決算
  • 社用車を3,000,000円で購入し、H29/7/1に納車された
  • 国税庁HPで確認した自動車の耐用年数は6年
  • 国税庁HPで確認した耐用年数6年の定額法の償却率は0.167
  • 国税庁HPで確認した耐用年数6年の定率法の償却率は0.417

 

【定額法の場合】

取得価額3,000,000円に対して1年間で0.167の費用を計上します。

1年目(H30/3期):3,000,000円×0.167×9か月÷12か月=375,750円

2年目(H31/3期):3,000,000円×0.167×12か月÷12か月=501,000円

3年目(H32/3期):3,000,000円×0.167×12か月÷12か月=501,000円

【定率法の場合】

期首簿価(取得価額3,000,000円からすでに費用計上した残りの金額)に対して1年間で0.417の費用を計上します。

1年目(H30/3期):3,000,000円×0.417×9か月÷12か月=938,250円

2年目(H31/3期):(3,000,000円-938,250)×0.417=859,749円

3年目(H32/3期):(3,000,000円-938,250-859,749)×0.417=501,234円

 

減価償却方法は選択できる?

減価償却方法は固定資産の種類(建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、器具備品、ソフトウェア)ごとに、税法によって定められています。しかし、固定資産の種類によっては減価償却方法が選択できます。

  • 建物、建物付属設備、構築物、ソフトウェア:「定額法」のみが認められており選択不可
  • 機械装置、車両運搬具、器具備品:「定額法」と「定率法」の選択可能

 

上記の例で、当初3期間の費用計上額は、定額法によれば1,377,750円、定率法によれば2,299,233円となり、両者の間に921,483円の差が出ています。

定率法は、最初は費用計上額が大きく、だんだんと費用計上額が小さくなっていくのに対し、

定額法は、最初から最後まで費用計上額が一定であるためです。

いずれの方法によっても、耐用年数である6年間を通して計上される費用の総額は3,000,000円で変わりありません。

 

「少しでも多くの利益を計上したい」のであれば、定額法。

「少しでも税金を支払うのを遅くしたい」のであれば、定率法。

を選択するのがよいでしょう。

 

<注意!>

一度選択すると一定期間(概ね3年程度)は継続適用しなければなりません。

でなければ費用の額を毎期操作して利益操作や税金逃れをできてしまうからです。