会計上の「資産」を正しく理解していますか?~経営者が知っておきたい会計用語
現金や預金、売掛金が資産であることに疑いはありませんが、「前払費用」が資産であることに疑問を持ったことはありませんか?
本日は、会計上の「資産」の意味を体系的に説明してみたいと思います。
資産は大きく2つに分けられる
資産はキャッシュ(現金・預金)との関係で以下の2つにわけて理解することができます。
- 現在のキャッシュまたはキャッシュに交換できるもの
- 将来のキャッシュ獲得に貢献する支出のうち、まだモノ・サービスを消費していない部分
以下で具体的に見ていきましょう。
資産①:現在のキャッシュまたはキャッシュに交換されるもの
一般的な「資産」のイメージです。「財産」といってもよいかもしれません。
現在のキャッシュとして、現金と預金が該当します。
キャッシュに交換されるものは、例えば以下の通りです。
- 営業債権(売掛金、受取手形など):得意先から販売代金を回収するまでの債権であり、通常1~2か月程度でキャッシュとなる。
- 棚卸資産(商品、製品など):販売する前の在庫であるが、販売したら売掛金を経由して最終的にキャッシュとなる。
- 有価証券(株式、社債など):市場や相対で売却すればキャッシュとなる。
- ゴルフ会員権:会員権自体に価値があるため売却することが可能であり、売却すればキャッシュとなる。
- 貸付金:返済によりキャッシュとなる。
- 立替金:会社が一時的に立て替えた支出であり、立て替えた相手からの精算によりキャッシュとなる。
このように「現在のキャッシュまたはキャッシュに交換されるもの=資産」となります。
資産②:将来のキャッシュ獲得に貢献する支出のうち、まだ財・サービスを消費していない部分
会社は利益の獲得を目的とする事業体であり、会社の支出は、その意味の大小はあるにせよ、キャッシュ獲得を目的としているはずです。
商品購入代金の支払い、建物や備品の購入、人件費の支払い、家賃や水光熱費の支払い、のように営業活動の中で当然のように行われている支払は、モノやサービスを販売してキャッシュを獲得する途中過程での支払いであるといえます。
借入利息の支払いや税金の支払いについても、事業を継続するために必要な支出であり、最終的には(事業継続による)キャッシュ獲得を目的としている支出です。
これらの支出は、会計上は「消費したとき」に「費用」として計上します。これを発生主義といいます。
これらの支出は「支出したとき」ではなく「消費したとき」にキャッシュ獲得に貢献するため、「支出したが消費する前の状態は、会計上価値があるので、資産として計上しましょう」という考え方をとります。具体例を見ていきましょう。
- 前払費用:一般的に地代や家賃は賃借月の前月に翌月分を支払います。地代・家賃を支払った時点では「土地や建物の使用」というサービスは消費していないため、会計上は「前払費用」という科目に計上します。「すでに支払済みだが土地や建物を一定期間使用する権利」を意味する資産です。
- 固定資産:土地や建物、機械、備品などの固定資産は長期間の使用によってキャッシュ獲得に貢献しますが、支出時点は当初の購入時点です。会計上は「減価償却(参考記事)」という手法を通して、固定資産という財の消費を按分して費用化します。すなわち、貸借対照表に計上されている資産計上額は、取得金額(支出した金額)のうち、将来の未消費部分を意味する資産となります。
- 繰延資産:設立登記費用のような開業準備に要した支出を計上する開業費は、将来の事業活動によるキャッシュ獲得に貢献する支出です。これも会計基準によって、一定の期間で費用化しなければなりません。まだ期間が残っている部分(費用化していない分)については繰延資産として計上します。
最後に
社会通念上の資産は現金、預金、土地、建物、株式などの「財産」がイメージされます。
しかし会計上の資産は、これに加えて、「支出と財・サービスの消費」という考えが絡んでくるため、理解しにくい部分があります。
これを理解できれば、資産と費用の関係もクリアになり、より有機的に会計の理解が深まるのではないかと思います。
本稿がその助けになれば嬉しく思います。