中小企業にとってのキャッシュフロー分析(4)~営業CFを改善する方法
今回は営業キャッシュフローを改善する方法を紹介します。資金繰りを改善させる際にも参考になります。
利益を増やすこと
言うまでもありませんが、何よりも最重要なのは、利益を増やすことです。
簡略化すると「営業キャッシュフロー=営業利益+減価償却費(支出を伴わない費用)」なので、
売上を増やす(収入を増やす)、売上原価を減らす(支出を減らす)、販管費を減らす(支出を減らす)、この3つです。
昔、ある本で「設備投資を増やして減価償却費を増やせばキャッシュフローが増えます!」と書いてありましたが、営業キャッフローは増えません。上記算式に当てはめればわかります。減価償却費が増えればキャッシュフローは増えますが、その分営業利益が減るので営業キャッシュフローとしてはプラスマイナスゼロです。
厳密には、設備投資をした最初のタイミングで大きな支出が発生し→その後はP/L上は(減価償却費によって)費用が増加し、その分だけ法人税の費用と支出が減る、というキャッシュフローへの効果があります。
利益を増やせば営業キャッシュフローが増える。
こんな当たり前のことを言っても仕方がないので、利益に関係なく営業キャッシュフローを改善する方法をいくつかご紹介します。
営業キャッシュフローを改善する方法
1.売上に対する入金額を早期化する
B to Bのビジネスであれば、一般的には売上を計上した際に、売上債権が計上されるため、売上時点では入金はありません。この入金を早めることができれば、営業キャッシュフローが改善されます。具体的には以下のような方法が考えられます。
- 売掛金の回収サイトを早めてもらう
- 受取手形の先を掛入金に切りかえてもらう
- 期日未入金の売掛金の回収を図る
- ファクタリングを利用する
- 手形割引を利用する
ファクタリングと手形割引については、売上債権を売却することになるため、買取会社に手数料や金利を支払わなければならない分、入金額が売上金額よりも小さくなるため、長期的に見れば営業キャッシュフローを減少させてしまうことに注意が必要です。
2.仕入に対する支払時期を長期化する
売上の逆です。仕入については、できるだけ支払時期を後ろ倒しにすることが有効です。
売上の場合にはお金をもらう相手に対して融通をお願いする形になるため実行が難しいケースが多いですが、仕入の場合には、こちらがお金を支払う側であるため、交渉しやすいケースが多いです。具体的には以下のような方法が考えられます。
- 現金で仕入れているものを買掛金に切りかえる
- 買掛金のサイトを長くする
- 買掛金の支払の締め日と支払日の期間を遅らせる(例えば15日締・末日払い→末日締・翌末日払い)
- 買掛金の決済に支払手形を利用する
最後の手形支払については、支払を先延ばしにできるメリットがある反面、手形決済を行えないと信用力が一気に低下するというリスクがあるため、利用には注意が必要です。
3.販管費に対する支払時期を長期化する
仕入の場合と同じです。買掛金を未払金に読み替えればそのまま当てはまります。
細かい話ですが、例えば法人が消耗品を買う場合にも、ネット通販で振込や代引で購入するよりも、法人用クレジットカードで支払えば1か月程度支払を遅らせることができます。
4.その他
上記はあくまでも債権・債務に関して営業キャッシュフローを改善する方法の一例に過ぎません。
これ以外にも、在庫(棚卸資産)の保有量を適正化したり、仕入発注のタイミングをコントロールしたりする方法など、様々な方法が考えられます。