経営者が銀行融資を受けるために知っておくべき銀行の考え方

銀行のビジネスモデルから考える融資判断のポイント

銀行は集めた預金で融資を行い利ざやを稼ぐビジネスモデル

銀行が融資をする際に気にするポイントを理解するためには、銀行のビジネスモデルを理解することが必要です。

言うまでもありませんが、銀行は個人や企業から広く預金を集めてきて、そのお金を別の個人や企業に貸し出すことで(あるいは有価証券を運用することで)、利ざやを稼ぐビジネスモデルです。

銀行の収益の柱は貸出金利息です。

では、預金で集めたお金を無規律に貸し付けていけばいいのかというと、そうではありません。

貸出金の原資である預金は、預金者から預かった大事なお金であり、貸出金が回収できない場合には預金者へ預金を払戻せない可能性があるためです。

銀行は信用で成り立っているため、預金の払い戻しに懸念があるという状態は、銀行のビジネス存続そのものに影響します。

すなわち、銀行は貸出金利息を獲得したいが、一方で貸出金を回収できない貸倒リスク(信用リスクと言います)はできるだけ抑えたい、という2面を意識しています。

これは、貸倒リスクの低い先からは貸出金利息が少なくても問題ありませんが、貸倒リスクが高い先からは、相応の貸出金利息をもらう必要がある、ということを意味します。

貸出利率の決まり方

貸出利率は以下の4要素の合計で決められます。

  1. 調達コスト
  2. 事務コスト
  3. 貸倒リスクの対価
  4. 利益

調達コストとは、貸出金の元手となる資金を集めるためのコストです。預金者に対する預金利息と考えればOKです。

事務コストとは、融資するためにかかっている経費です。銀行マンの人件費、本部の人件費、設備費、システム費用、消耗品費等々です。

貸倒リスクの対価とは、貸出金が全額返済されないかもしれないリスクに対して貸出先が負担しなければならない上乗せ分です。銀行が貸倒リスクが高いと判断すれば、上乗せ分が大きくなりますし、仮に銀行が「絶対貸し倒れない」と考えれば0になります。

儲けとは、その名の通りです。これを0にしてしまうと、銀行は利益が出ないビジネスモデルになってしまいます。

仮に2%の貸出利率であれば、その内訳は「調達コスト0.1%+事務コスト0.4%+貸倒リスクの対価1.0%+儲け0.5%」で構成されているかもしれません(当然、銀行はその内訳は教えてくれません…)。

 

これら4要素は銀行によって異なります。

メガバンクのように認知度が高く、自然と預金が集まる銀行は調達コストは安いですが、信用金庫はキャンペーンを打たないと預金が集まらないかもしれず調達コストが高いかもしれません。

経費コストは規模が大きい銀行ほど効率的な運営ができるため抑えられるはずです。

貸倒リスクは銀行ごとに判断基準が整備されており、融資の審査担当者が決定します。なので、貸倒リスクも銀行によって判断が分かれるところです。

儲けも銀行によります。薄利を受け入れる銀行もあれば、必ず一定の儲けを乗せる銀行もあるでしょう。

これらの理由により、同じ人に同じ金額を貸すにしても、貸出利率は銀行ごとに異なってきます。

返済能力(保全・収益償還能力)があるかを重要視

銀行が融資申込を審査する際にもっとも重要視するのが返済能力です。

返済能力は「保全」と「収益償還能力」で測ります。

保全とは、担保や保証のことを指します。貸出先の業況が悪化して返済が滞った時に、担保資産を処分したり保証先から代わりに返済を受けることができるのであれば、銀行としては安心です。

収益償還能力とは、貸出先が事業で稼いだお金で借入金を返すことができる能力を言います。言い換えると、企業としてキャッシュフローをどれだけ稼げるか、ということです。銀行は決算書や資金繰り表、あるいは事業計画をもとに将来のキャッシュフロー獲得能力を計算し、収益償還能力を評価します。

仮に保全が100%取れているならば、銀行としては取りっぱぐれることはないため、収益償還能力が低い先にも融資するでしょう。

逆に、保全がほとんど取れなかったとしても、収益償還能力が高いと判断すれば融資をすることもあり得ます。

 

起業して間もない会社が銀行融資を受けるために

銀行は保全と収益償還能力を重要視しますが、起業して間もない多くの経営者にとって、担保に入れられる資産はありません。

そのような中で銀行融資を受けるためには、以下の2つのアプローチが考えられます。

  • 「保全」の面から、信用保証協会の保証を付ける
  • 「収益償還能力」の面から、合理的な事業計画を作成し収益償還能力が高いことを銀行に納得してもらう

信用保証協会の保証を付けるために保証協会の審査を受けなければならないのですが、この審査の事業計画に基づいて事業の見通しや将来性を説明しなければなりません。

結局のところ、「銀行や信用保証協会を説得できる事業計画が作れるか否か」が重要なポイントになるということです。