変化が求められている銀行の融資スタンス~起業時にも影響?

 

前回記事 経営者が銀行融資を受けるために知っておくべき銀行の考え方 に引き続き、銀行の融資スタンスの理解を掘り下げてみます。

変化を求められている銀行の融資スタンス

銀行の収益環境

銀行の収益環境は近年厳しくなっています。

本業である貸出金利息がどんどん減っているからです。日銀のマイナス金利政策に表れているように、日本の金利水準は著しく低い金利水準が続いている状況にあります。

前回記事で説明した貸出利率の4要素で言えば、各銀行のとも「儲け」を削って、貸出先を取り合っているので、より競争が激化して「儲け」を削る、という状態になっています。

貸出先を取り合わなくても、「お金を借りたい中小企業がたくさんあるはずだから銀行は貸出先に困らないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、多数の個人から大事な預金を預かっている銀行にとって、また、多数の株主を有しており利益を稼ぐことを目的とした組織である以上、いくら貸出先を増やしたいと言っても、貸倒リスクの高い先に安易にお金を貸すことはできないのです。

事業性評価に基づく融資が求められている

そんな銀行に対して、国(金融庁)は、「事業性評価に基づく融資」を推進することを期待しています。

わかりやすく言うと「融資(見込)先のビジネスをちゃんと理解して、今後成長が見込めるのであればリスクをとってでも融資しなさい。」ということです。

前回記事の例に絡ませると、「保全よりも収益償還能力をより重視しなさい。」ということです。

今までの銀行は、「保全」を重視して融資判断を行なってきました。「保全」は担保や保証という事実に基づいているので、誰が見てもわかりやすく安心だからです。

一方で「収益償還能力」は融資先それぞれに対する銀行(担当者)の「判断」に基づいています。適切に「判断」するためには相応の知識や能力が求められます。事業内容や業界の動向を理解し、決算書を分析し、事業計画の妥当性を評価することが、銀行に求められているということです。

融資を受けるために今後ますます重要となってくる2つのポイント

ここまでを読んでいただくと、これから銀行融資を受けたい場合に何が重要になってくるかが見えてきます。

私は以下の2つのポイントが、今後ますます重要性が増してくると思います。

1.経営者が自社の事業内容と将来性、それに基づくキャッシュフローの獲得能力を語れること

銀行は「社長」を見ています。事業の方向を決め、推進していくのは社長だからです。

これからの経営者は、会計の考え方(高度な簿記の知識の有無を言っているのではありません)について一定の理解があり、自社の財務状況を客観的に語れるか、がより重要になってくると思います。

2.収益償還能力があることを銀行にしっかりと説明し、理解してもらうこと

 

このその最たる手段(ツール)が、事業計画です。

事業計画を作成する目的は事業の現状と今後の方向性を確認し、必要なアクションを明確にし、それを関係者に伝えるためのものです。

銀行が融資の可否を決定するまでには、①自社の融資担当者が融資してもOKと判断する→②融資担当者がその判断根拠を融資稟議書にまとめる→➂融資稟議書を審査部門が承認する。というプロセスを通ります。

 

自社事業の現状と将来性を合理的に説明できる事業計画をいかに準備し、融資担当者に納得感のある融資稟議書を書いてもらうか。

従来にも増して事業計画の重要性は高まっています。