起業して10年後の生存率は1割未満って本当?

起業した経営者の方、今起業することを検討している方、

「企業の生存率」を考えたことはあるでしょうか。

※生存率=開業して〇年後に何%の企業が生存しているかの割合

 

ネットで検索してみると、以下の情報を示したページがいくつも出てきます。

  • 1年後:40%
  • 5年後:15%
  • 10年後:6%
  • 20年後:0.4%

本日はこの数字について考えてみたいと思います。

起業して10年後には6%しか残っていない!?

この数字を見て、私は「これって本当?」と思いました。

調べてみると、サイトによっては「国税庁のデータベース」とは書いてあるのですが、具体的なリンクはありません。

国税庁のホームページを確認しましたが、該当するデータはありませんでした。

 

出所が確認できる類似データはないかと探していたところ、中小企業庁のホームページに以下の情報がありました。

2011年の少し古い情報にはなりますが、上記の生存率とは大きく異なります。

 

企業の生存率

 

(出典:中小企業庁HP 中小企業白書2011年版全文 第3-1-11図)

 

2017年の中小企業白書においても、5年後までですが同様のデータがありました。

(出典:中小企業庁HP 中小企業白書2017年版全文 コラム2-1-2②図)

 

2011年版では1年後の生存率は97%、5年後で82%、10年後で73%となっており、

2017年版では1年後の生存率は約95%、5年後で約82%と同様の結果となっています。

 

冒頭の10年後6%と非常に大きな乖離があります。

対象企業が帝国データバンクに登録されている企業となっているため、

本当の零細企業や個人事業主は含まれておらず、一定程度以上の事業規模の企業が対象となっているのでしょう。

(COSMOS2というデータベースには140万社程度が登録されているようで、日本の企業者数400万社の約3分の1に相当します)

 

比較的規模の大きい企業が対象になっているであろう本データの特性を踏まえれば、

10年後に73%という数字は、感覚よりも大きく算出されていると思われます。

 

ネットで紹介されている「10年後生存率6%」、中小企業白書の「10年後生存率73%」は乖離がありますが、

少なくとも3割以上の企業は10年生き残れていないということが推察されます。

 

倒産原因は「販売不振」が圧倒的多数

 

中小企業庁の統計データにて、倒産原因が月次で公表されています。

当該データを集計してみると以下のようになります(対象期間2017年1月~7月)。

  • 販売不振   :69%
  • 既往のしわ寄せ:13%
  • 連鎖倒産   :6%
  • 放漫経営   :5%
  • その他    :7%

販売不振が断トツで多く、連鎖倒産のように原因が他者にあるものは意外にも少ない結果となっていました。

売上の減少が最大の問題であることはわかりますが、販売不振も既往のしわ寄せも、ある日突然やってくるわけではありません。

 

月次決算等を行いタイムリーに事業の状況を把握し、必要なアクションを適時にとっていくこと。

資金繰りを常に把握しキャッシュフローを重視した経営を行うこと。

これらが重要だということを改めて考えさせられるデータだと思います。