手形割引のメリット・デメリット

本日は手形割引のメリット・デメリットについて紹介します。

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手形割引とは

手形割引は、取引先から売上代金の回収等で受け取った約束手形を、手形期日が来る前に、銀行に現金化してもらう方法です。

具体的な取引例で見てみましょう。

  • 得意先A社が売上代金の支払として、10月1日に約束手形(期日12月31日、手形額面金額1,000,000円)を当社に渡した
  • 当社は当該約束手形を、11月1日にB銀行に980,000円で買い取ってもらった(手形の割引)
  • 手形期日の12月31日になり、得意先A社が手形代金1,000,000円を手形所有人であるB銀行に支払った

手形期日は12月31日であるため、通常は12月31日にならないと現金化できないのですが、銀行に手形を買い取ってもらうことで手形期日よりも前倒して資金化することができます。

これを銀行サイドから見ると、手形の買取日(割引日)から手形期日まで、お金を貸していることになります。手形額面金額1,000,000円と割引金額980,000円との差額20,000円が利息に相当します。

手形割引のメリット

 信用力が低い会社でも審査が通りやすい

手形割引の最も大きなメリットがこれです。銀行は信用力の低い相手(例えば債務超過で業績の悪い会社)には、証書貸付や手形貸付等の融資取引に応じてくれません。なぜならば、貸し倒れるリスクがあるためです。

しかし、手形割引の場合には、融資した資金が回収できるか否かを握るのは、手形の振出人の信用力です(上記例でいうと得意先A社です)。

すなわち、手形の振出人に信用力が認められるのであれば、借入人の信用力が低くても、銀行としては貸倒リスクを抑えることができるというわけです。逆に、手形の振出人の信用力が低い場合には取引に応じてもらえないケースもあります。

手形割引を申し込むと、銀行は手形の振出人の信用力をチェックします。具体的には、その銀行と取引のある先であれば銀行の信用格付をチェックするほか、取引のない先であっても帝国データバンク等の信用調査会社に照会することでチェックを実施します。

手形が不渡りとなった場合には、借入人(当社)が手形の振出人に代わって返済しなければならないため、借入人の信用力も審査の対象となりますが、証書貸付や手形貸付と比較すると審査は通りやすいといえます。

 

手形割引のデメリット

 手形不渡り時のリスク

手形が不渡りとなった場合には、借入人である当社が、A社の手形を買い戻さなければならず、上の例でいうと1,000,000円を銀行に返済しなければならなくなります。

ただ、このリスクは元々手形の振出人に支払能力があるか否かという問題なので、手形割引を実行から生じるリスクではありません(手形割引を実行しなくとも手形の代金は当社に支払われなかったはずです)。

借入額・借入期間が手形によって制限される

手形割引は受け取った手形を銀行に買い取ってもらう取引です。そのため、「2,000,000円を6か月間借りたい」と思っても、手持ちの手形に応じた融資しか受けることができません。

 どんなケースで手形割引が利用されているか

手形割引が利用される例として多いのは、建設業や製造業の下請け企業に見られます。取引先が自社よりも大手であり、かつ下請け外注型のビジネスでは、元請けから下請けへの仕入代金・外注代金の支払いに手形が使われるケースが多いです。

これらの商流の下流にある下請け会社では、仕入先にさらに手形を振り出すことは現実的でない場合が多く、「売上代金は3か月後に入金、仕入代金は1か月後に支払」のようなケースが生じてしまうため、受け取った手形を銀行に買い取ってもらい、運転資金を確保する形で手形割引が多く利用されています。