手形貸付のメリット・デメリット
本日は手形貸付のメリット・デメリットについて紹介します。
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手形貸付とは(前回記事のおさらい)
手形貸付は、約束手形を銀行に振り出すことにより、借入を行う方法です。
主な特徴は以下の3点です。
- 1年以内の融資取引に利用される
- 利息が前払となる
- 期日一括返済が基本
約束手形というのは、「X月X日に、〇〇円を支払うことを約束」するものです。これを銀行に対して振り出す代わりに、銀行からお金を貸してもらいます。例えば、「1年後に1,000,000円をA銀行に支払う」約束手形をA銀行に渡す代わりに、950,000円を融資してもらうような形となります。この場合の50,000円(1年間分)が借入利息に該当します。
手形貸付のメリット
手続が簡便なため比較的スピーディーに融資を受けられる
証書貸付と比較すると、銀行にとっての融資事務が少なく、審査さえ下りれば比較的早くに融資を受けられるという特徴があります。
そのため、季節的な資金需要に対応した賞与資金や納税資金、工事業者の工事立替資金(工事代金の入金までの資金)といった短期借入に利用するケースが一般的です。
期日前返済が可能
手形貸付は手形期日に一括返済することが前提の貸出形態ですが、期日前に資金余裕ができたときには、前倒して返済することが可能です。
利息については借入時に一括前払いしているため、期日前返済を行うと前払した利息が返還されます。
証書貸付においても期日前返済は可能ですが、違約金を課されるケースが一般的です。
印紙税が安い
金銭消費貸借契約書(以下、契約書)を取り交わす証書貸付では、契約書に所定の収入印紙を貼付する必要があります。貸手と借手の双方で契約書は2部作成しなければならないので、例えば1,000万円の借入では2万円(1万円×2)、5,000万円の借入で4万円(2万円×2)、1億円の借入で12万円(6万円×2)の収入印紙(印紙税)がそれぞれ必要となります。これが追加的な借入コストとして発生します。
一方で手形貸付は約束手形という有価証券を使用しますが、これも印紙税の対象です。しかしながら、契約書よりも印紙税は安く、しかも1通分でよいため、1,000万円の借入で4千円、5,000万円の借入で1万円、1億円の借入で2万円で済みます。
このように、印紙税の負担が安いというのもメリットの一つです。
手形貸付のデメリット
返済ができない場合の信用力低下が大きい
返済=手形決済を意味しますので、返済が実施できないことは「手形不渡り」の発生を意味します。半年以内に手形不渡りを2回起こすと銀行取引停止処分になり事実上の倒産につながります。また、手形不渡り1回であっても不渡りの事実が全金融機関に伝わることで会社の信用力は著しく低下しますので、新規の融資取引を受けることが実質的に不可能となり、資金繰りが悪化しているような場合には事業継続が厳しくなります。
長期的な借入が実施できない
手形貸付では1年を超える期間で資金を借り入れることができないため、設備投資資金のような長期性の資金調達には利用できません。
どんなケースで手形貸付を利用すべきか
手形貸付のメリット・デメリットを前提とすると、短期的な運転資金を調達する際に利用するのが適しています。