公認会計士試験の合格発表~29年度は1,231人!

2017年11月17日(金)に平成29年度公認会計士試験の合格発表がありました。

願書提出者数11,032人に対して論文式試験受験者数3,306人、そのうち論文式試験合格者数1,231人(合格率11.2%)となりました。

ここ数年間、合格者数は1,000人~1,100人程度で推移していたので、少し増えてきたのかな、という印象です。

本日は、過去の公認会計士試験の合格者数の推移と会計士の人数を調べてみました。

過去10年間の合格者数等の推移

公認会計士監査審査会のWebサイトから、現在の試験制度に変わる直前の平成17年からの受験者数及び合格者数を集計してみました。

平成17年度が旧試験制度の最終年度、平成18年度以降が現行の試験制度です。

ご覧の通り、受験者数、合格者数、合格率ともに、現行の試験制度になってからの12年間で大きく変動(減少)しています。

合格率についても、14.9%でスタートして、一時は6.5%まで低下し、ここ数年は10%強で落ちついている、という状況です。

「国家資格・国家試験なのになぜこんなに不安定なのか?」

このブログを読んでいただいている方は公認会計士やその受験生ではないと思いますので、この背景を簡単に紹介したいと思います。

公認会計士試験の大量合格者問題

上表を見ていただくと、新試験制度に変わってからの3年間(平成18年度~平成20年度)は合格者数が3,000人を超え、合格率も15%~19%と急騰しています。この裏側には、公認会計士のニーズが高まると期待された2つの事象が絡んでいます。

  • 上場企業による四半期報告書の公表の義務化(平成20年度から)
  • J-SOX(日本版の内部統制監査制度)の導入(平成20年度から)

前者は、従来は年2回(期末と中間)とされていた上場企業の決算開示を、年4回(3か月ごと)行いなさいという義務であり、後者は、企業が適切な決算を組むために自社の内部統制(業務を適正に行うための仕組み)を外部に内部統制報告書として報告しなさいという義務です。

そして、四半期報告書も内部統制報告書のいずれも、監査法人又は公認会計士による監査が義務化されました。公認会計士のニーズの高まりが期待されました。その結果、公認会計士資格の魅力度が高まり受験生が増え、金融庁も合格者数を増やした、ということです。

この時期(平成18年~平成20年)は「大量合格者時代」と言われています。

しかし、四半期報告、J-SOXともに導入期である平成20年度は業務量が飛躍的に増加した1年だったのですが、導入が一巡して平常運航に入ると、業務量もそれなりに落ち着いてきました(当然のことですが)。すると監査法人側は採用を絞り始めます。金融庁も合格者数を増やしすぎたとの批判から合格者数を抑え始めます。

一方、公認会計士試験の受験者数は、再試験組もいるため人数が急に減ることもなく、依然として20,000人台で高止まりしていました。

これらにより、公認会計士の合格率が低下し、合格しても監査法人に就職できないという、就職氷河期が訪れます。

平成22年の合格者の約4割が監査法人等に就職できない「就職浪人」になったといわれています。

これが俗にいう「大量合格者問題」です。

 

当時、J-SOX(日本版の内部統制監査制度)の導入、「公認会計士の社会的ニーズの高まり」を当て込んで、公認会計士を大量合格させたのですが、実際にはJ-SOXに関する需要はそれほど伸びず、また、監査法人以外の一般企業による公認会計士試験合格者の採用も抑制的だったため、「せっかく公認会計士試験に合格したのに就職先がない」という問題が発生しました。

最近の状況

大量合格者問題がメディア等でクローズアップされると、公認会計士資格の魅力が相対的に低下し、受験者数が減少し始めました。

一時期は約25,000人いた受験者数は最近では10,000人程度となり、合格者数も1,000人強、合格率は10%前後と安定しています。

しかし、この1,000人という人数は全然足りない数字なのです。

業界としては、オリンパスや東芝の不正会計問題をきっかけに、会計監査に対する市場・社会からの目が一段と厳しくなり、業務量は年々増加していますが、公認会計士試験の合格者数が少ないため、業務量の増加に見合った人材を十分に確保できず、監査法人は慢性的な「人不足」に陥っています。

参考記事:監査法人の現況

最後に

 

公認会計士が足りていないという現状を改善するためには、公認会計士の合格者数を増やす必要があります。

公認会計士の合格者数を増やすためには、受験者数を増やす必要があります。

受験者数を増やすためには、「公認会計士」自体の魅力を高める必要があります。

私も公認会計士として、「公認会計士になりたい」という人を一人でも増やしていけるよう、努めていきたいと思います。