中小企業にとってのキャッシュフロー分析(3)~設備投資とキャッシュフロー

今回はキャッシュフローの考え方を実際に活用した例を紹介します。

設備投資を検討するときの投資回収期間の算定

営業CFの算定方法を理解できれば、設備投資の回収期間を測ることができます。
「投資回収」なので、会計上の利益ではなく、キャッシュベースで考えます。

通常、投資する場合には銀行借入や代表者からの借入で資金を調達するため、投入した資金の返済を賄えるかはキャッシュベースで考える必要があります。

具体例で見てみましょう。

具体例

 

A社は飲食店を営んでいる。現在は1店舗を経営しているが、現在2店舗目を出店することを検討している。新店舗の利益計画は以下のとおりである。

投資額:8,000千円(耐用年数10年)
売上:30,000千円
売上原価:12,000千円(粗利率:60%)
販管費:17,000千円(人件費12,000千円、減価償却費:700千円、その他経費3,300千円)
借入金:8,000千円 金利2%、1年目支払利息160千円

<投資回収期間の計算>
※ここでは、簡便的に債権債務、在庫の影響は考慮しないこととします。
① 営業CFの算定
売上入金30,000千円-売上原価支出12,000千円-経費支出16,300千円=1,700千円

② 借入利息も含めたCFの算定
1,700千円-160千円=1,540千円

③ 投資回収期間の算定
投資額7,000千円÷1,540千円≒4.5年

投資回収期間から考えること

7,000千円の投資に対して年間CFが1,560千円であり、投資回収期間4.5年となりました。これを受けて経営者は以下の2点を考えるはずです。
一つ目は「4.5年という期間を受け入れられるか」という点です。

投資回収期間が4.5年ということは、「4.5年は投資を回収しきれないというリスクを負う」ということを意味しますので、経営者のリスク感覚としてその期間を受け入れるか否かが検討されます。

二つ目は「資金をどのように調達するか」という点です。言い換えれば、銀行からどのように借りるかです。

例えば返済期間4年間の元金均等返済で借りるとすれば、年間返済額は2,000千円となりますが、先で算出した年間CFが1,540千円であることを考慮すると、1年目から▲460千円の資金不足となり、手元の資金繰りが逆に厳しい状態になってしまいます(その分5年目以降は銀行返済が終わるので資金繰りが格段に良くなりますが)。

こういった点を考えながら、投資計画自体を見直すことがあります。例えば店舗規模を1周り小規模にすれば設備効率と人事効率が良くなり、人件費・経費が抑えられ、CF的にはもっと有利かもしれません。もしくは厨房設備はリースを利用して、店舗設備も居ぬき設備を賃借することで、CF的に有利になるかもしれません。

最後に

中小企業は財務体力が乏しいので、設備投資を行うに当たっては、特に慎重な検討が求められます。上記の例では、投資計画上は一定の利益が見込まれていますが、キャッシュフローの観点では、借入返済の支出とのバランスを見ないと、「儲かっているはずなのに資金繰りが厳しい」とった状況に陥る恐れがあります。

設備投資を考える上で、「キャッシュフロー」に着目することが重要であることがわかっていただけたでしょうか。