粗利って何?〜経営者が知っておきたい会計用語

「粗利(あらり)」「粗利益(あらりえき)」「粗利率(あらりりつ)」。よく耳にする言葉ですが、実はよく理解されていないことも多い「粗利」について解説します。

粗利とは

粗利(あらり)とは、損益計算書上の売上総利益をいい、「売上から売上原価を差し引いたもの」です。粗利益(あらりえき)も同じ意味です。粗利率(あらりりつ)とは、売上に占める粗利の割合です。

  • 粗利=売上総利益=売上-売上原価
  • 粗利率=粗利÷売上

ここで売上原価とは、小売業や卸売業であれば販売商品の仕入代金、製造業であれば製品の製造にかかった費用が該当します。言い換えれば、販売方法によらず、商品やサービスを提供するために直接かかってくる費用をいいます。

すなわち、(多少語弊があるかもしれませんが)、粗利とは「商品やサービス自体の稼ぐ利益」であり、粗利率とは「商品やサービス自体の稼ぐ力」と考えることができます。

具体例として、喫茶店を営んでいるA社とB社のコーヒーで比較してみましょう。

<A社>

コーヒー1杯あたりの

売上:400円、原価:100円、粗利:300円

粗利率=300÷400=75%

<B社>

コーヒー1杯あたりの

売上:300円、原価:60円、粗利:240円

粗利率=240÷300=80%

 

1杯あたりの単価はA社の方が高いですが、粗利率に直すとB社の方が高いです。これは、B社の提供するコーヒーの方が同じ金額を売った時の粗利が大きくなることを意味します。

1日の売上が20,000円だと仮定すると

  • A社:20,000円×75%=15,000円
  • B社:20,000円×80%=16,000円

の粗利が残ることになります。

この粗利(売上総利益)から、販売費及び一般管理費(喫茶店の人件費や光熱費など)、借入金の支払利息、法人税等の税金、を支払った残りが最終的な利益となります。

粗利が利益の源泉

売上が増えればそれだけ収入が増えるため、「売上が増えれば利益が自然とついてくる」と思って売上の増加に目が行きがちですが、本当に必要なのは「粗利」です。

例えば先の例で、1杯400円のコーヒーを提供しているA社が1杯あたり300円のB社に対抗してコーヒーの価格を300円に改定したとしましょう。

販売価格を改定しても原価は変わらないので、コーヒー1杯あたりの粗利は200円、粗利率は210円÷300円≒67%となります。

価格改定の結果、A社の狙い通り客数は1.5倍に増加し、1日あたりの売上は30,000円になったとしましょう。

  • 客数(改定前)=20,000円÷400円=50人
  • 客数(改定後)=50人×1.5倍=75人
  • 売上(改定後)=75人×300円=22,500円
  • 粗利=22,500円×67%≒15,000円

なんと、客数が1.5倍となり、売上も増加したのに粗利は増えていません。実際には、客数の増加に伴う人件費や経費の増加により、最終的な利益は減ってしまうでしょう。

「利益の源泉は粗利」であり、

上記の例は価格を25%引き下げて客数が50%増えるという極端な例かもしれませんが、現実的に同様のケースが生じることも十分に考えられます。

売上はもちろん大事ですが、同じくらい「粗利」も大事だということを頭の片隅に入れておいていただけたらと思います。